(だんだん絵が上手くなってきました(笑)) 「ご主人さんに容器に射精してもらって、その精液を遠心分離して、シリンジに詰めて、そのシリンジにチューブを付けて子宮内に精子を注入すること。」 これが一般的に「人工授精(AIH)」と呼ばれているものです。 (実際には、「IUI(=Intra Uterine Insemination)」の方が正しいと思うのですが、AIHという言葉が広く使われていますので、ここでは、この表現を使うことにします。) |
えっと、雑な絵ですが、復習を。 そもそもヒトには、ベストタイミングで精子を子宮内に届けるシステムがきちんと備わっているのでした。 排卵期になると、卵胞が「エストラジオール」というホルモンを出して、これに反応して頸管粘液という「精子にとってのオアシス」がきちんと分泌されて、精子が子宮内に侵入できるようになっていたのでした。 |
実際に論文に当たってみましょう。
2012年のコクランです。
真ん中あたり、「MAIN RESULTS」というところの書き出しに、
「One trial compared IUI in a natural cycle with expectant management and
showed no evidence of increased live birth.」
と書いてあります。
さらにもういっちょ。2008年のBMJです。
ですが、こちらは
【「natural-T.I.」群】:何もしない。病院にもかからない。基礎体温も計らない。尿中LHチェックもしない。
【「クロミフェン-T.I.」群】:クロミフェン(50)をday2から5日間内服。day12~性交渉。
【「natural-AIH」群】:自然周期、LHサージでAIH。排卵前はタイミングなし。
で、6ヶ月try。最終結果は出産率で評価だそうです。
さあ、どうなったと思います?(本HP読んでくださっている方には簡単ですかね?)
結果は
【「natural-T.I.」群】:32/193で17%
【「CC-T.I.」群】:26/192で14%
【「natural-AIH」群】:43/191で23%
で、いずれも有意差はないという結果でした。
この論文の中で、この言葉が印象的でした。
Expectant management, however, is not a popular option, and several empirical interventions have been used for many years without rigorous prior evaluation. Commonly used first line treatments for unexplained infertility include clomifene citrate and intrauterine insemination.
(原因不明不妊に対して)待機療法(つまり「natural-T.I.」)はあまり選択されず、数々の「経験的な」治療がきちんとした評価もなしに行われている。そういったものの中に「クロミフェン」と「人工授精」がある。)
カッコイイ。
「妊娠率を上げる」というデータのない行為が漫然と行われ、結果的にそれに苦しめられている不妊患者さんが仮にいたとすると、本当に悲しい限りです。