人工授精前の禁欲期間は何日がいいのか?


本HPの推奨は「2日未満」です。

人工授精時しばしば頂戴する質問に、「ご主人さんは何日禁欲していればいいか?(溜めていればいいか?)」というのがあります。
要するに、「精子はためるほど濃くなり、人工授精時に濃い精子を出してもらった方が妊娠率が上昇するのでは?」という発想ですね。

では、実際はどうなんでしょうか?
世界には、これに対し、きちんと検討し、答えを出している先生方がいらっしゃいます。
本ページでは、

の2本の論文を解説してまいりたいと思います。

【管理人注】
妊娠するための禁欲期間」と「検査のための禁欲期間」は別物です。
「検査のための禁欲期間」はWHOの「2日以上7日以内」を守りましょう。

(1)A short period of ejaculatory abstinence before intrauterine insemination is associated with higher pregnancy rates.

この先生達は、過去のAIHのデーターを見直すという方法で検討しています。
人工授精前の禁欲期間が

に分けたところ、各々の妊娠率は、

と、禁欲期間が最も短い「2日未満」が最も妊娠率が高かったそうです。

精液の所見はというと、やはり禁欲が短い場合、得られる運動精子は少ない。それでも、妊娠率は良い、ということだそうです。
しかも、禁欲期間が0日(つまり24時間未満)でも、十分量の運動精子が得られ、しかも、最も妊娠率が高いようです。

この先生達は、この結果から、次のようなことを推奨しています。

(2)Effect of ejaculatory abstinence period on the pregnancy rate after intrauterine insemination.

この先生達も、過去のAIHのデーターを見直すという方法で検討しています。
417カップルの929周期で検討したそうです。
クロミフェン50mg 5日間の誘発周期、精液は濃度勾配遠心法にて処理だそうです。
929周期中113周期(12%)で妊娠成立したとのことです。

精液検査所見は、従来から言われている通り、禁欲期間が長くなれば、精子濃度が濃くなって、運動率が悪くなりました。
では、肝心の妊娠率はというと、
禁欲期間が1日のカップルの妊娠率は19%(!!)、2日で13%、3日で14%、4日で9%、5日で10%、6日で12%、7日で11%、8~10日で10%、そして、禁欲期間が10~30日では3%でした。そして、14日以上禁欲していたカップルでの妊娠は0%だったとのことです。

さらに

に分けたところ、グループ1は妊娠率14%、グループ2は10%、グループ3は3%になり、これらは統計学的に有意差がでるそうです。

以上より、著者の先生達は、人工授精前の禁欲期間は3日以内とすべきと結論付けています。 

【どくさま流結論】禁欲期間は短め!

そんなわけで、人工授精前の禁欲期間は短めの方が妊娠率が高い、という報告を2本ご紹介いたしました。
最近では、禁欲期間が長くなると、精子のDNA断片化が起こる、といった報告も見られ、長期禁欲はよろしくない、という流れのようです。

inserted by FC2 system