子宮内膜ポリープ:ポリープが先か?不妊が先か?


子宮内膜ポリープは切除したほうが妊娠には有利なのか?

結論を先に言ってしまうと、「不妊治療上、子宮内膜ポリープは取ってしまったほうがよい」ということになります。
この結論を導き出した超有名論文をご紹介したいと思います。
かつ、この論文は話の流れが面白く、僕の大好きな論文の一つです。



Hum Reprod 20(6); 1632-1635, 2005

で、この先生たちは、不妊症患者さんの子宮内膜ポリープを切除したほうがいいのか?を検討するために次のような介入研究を計画したそうです。

といったプランでした。
確かに子宮内膜ポリープを切除したほうがいいのかどうかを検討するのにいい研究プランですね。

で、子宮鏡で、手術なり生検をしてから、その3周期後から(←ここがミソ)人工授精を始めることにしたそうです。
で、参加してくれる患者さんたちが集まり始めました。
【検討群】:107人(途中で6人ドロップして、結局101人)
【対照群】:108人(途中で5人ドロップして、結局103人)
で検討したそうです。

最終的に妊娠したのは【検討群】:64/101(63.4%)、【対照群】:29/103(28.2%)でポリープ切除群の圧勝だったそうです!

で、それはそれでいいんですが、なんとこの論文にはオチが付いています。
検討群(ポリープ切除群)の妊娠のうちの65%が最初のAIHの前、つまり、手術 - AIHまでのお休みの3周期の間に成立しちゃったんですって!
で、筆者の先生たちの考察が面白い。

だそうです。

「2番目に大事な結果」として、
不妊原因をビシッと解決できれば自然妊娠できるのです。無駄な治療は要らないのです。
ということを見事に示してくださった(?)論文です。

子宮内膜ポリープの診断

以下の内容はこちらを根拠に書いていきます。

AAGL practice report: practice guidelines for the diagnosis and management of endometrial polyps.

AAGLというのは、American Association of Gynecologic Laparoscopistsの略ですから、「アメリカ婦人科内視鏡学会」といった感じでしょうか。そのガイドラインということですね。
もちろん、アメリカの学会のガイドラインであり、科学的根拠に基づいているわけですが、必ずしも対象が不妊患者に限ったわけではない点で、解釈には多少注意が必要です。

このガイドラインの診断の所を読むと、
「経腟超音波では、増殖期が最も診断精度が高い」
と書いてあります。
これを少し説明しておきます。

子宮内膜ポリープは、超音波では普通「白く」見えます(hyperechoicと言います)。
で、分泌期(=卵巣なら「黄体期」)子宮内膜も普通「白く」見えます。
よって、分泌期(黄体期)には「白」の中に「白」がいるので見えにくいのですね。
確かによ~~~く見ると、白いポリープの周りを「線」が縁取りしているのが見えることがあります(haloと言います)が、よほど注意して見ないとなかなか気が付きにくいです。

月経中はかなりきびしいです(終わりかけぐらいの時期ならポリープそのものが見えることがあります)。

で、最も見つけやすいのが増殖期(卵巣の「卵胞期」)ですね。
それも排卵近くならなお見やすいです。
この時期の子宮内膜は、典型例では有名な「木の葉状」と呼ばれる特徴的な超音波像を呈することが多い(注:必ずではない!)ので、この中に「白い」ポリープが浮かんで見えます。

そんなわけで、子宮内膜ポリープの存在はまず経腟超音波で疑うわけですが、結構月経周期に左右されます。
「今まで言われたことなかったのに!」
なんてなってらっしゃる方を時々拝見しますが、そういう事情だと思います。

ただし、不妊治療を受けてらっしゃる方は、「卵胞チェック」で経腟超音波を見るシーンが多いので、「もっとも見つかりやすい時期」に頻回に超音波を見ることになるので、見つかりやすいとも言えますね。

子宮内膜ポリープの治療

引き続きAAGLのガイドラインから。内容を箇条書きにします。
先ほども書きましたが、このガイドラインは「不妊患者に限定した内容ではない」点にご注意ください!

といった内容になっています。
しつこいですが、このガイドライン自体は基本的に「内視鏡屋さん」のものなので、「子宮鏡万歳!」といった内容になっているわけですが、少なくとも
「取って悪いことはない」
「取るならちゃんと子宮鏡下で覗きながら取りなさい」
「搔爬はダメです」

とのことです。

【「どくさま」流治療戦略】ポリープが先か?不妊が先か?作戦!

ここから先は、僕の個人的な考え方です。エビデンスがあるのかどうかは知りません。
あくまで「僕はこう考えている」という持論です!お間違えなきように!


もう少しだけAAGLのガイドラインを読んでみたいと思います。この中に結構ヒントが転がっています。

などなど。まだまだたくさん書かれているのですが、とりあえずのキモはこの辺です。

どうですかね?何かピンと来るものがないですか?
・筋腫・内膜症などがあると内膜ポリープを同時に持っている可能性が高い。
・ある種のホルモン剤で頻度が増えたり減ったりするようだ。

ということは・・・・!
そうなんです。
内膜ポリープは不妊の原因でもあるのですが、逆に不妊であるがゆえにその結果内膜ポリープができてしまった可能性があるのではないか?
というわけです。
これが、僕が「卵が先か?鶏が先か?」にちなんで「ポリープが先か?不妊が先か?」と表現している理由です。

一番最初に出てきたHum Reprodの論文の結果通り、子宮内膜ポリープがあれば、それを切除する。すると、結構な割合で、それだけで妊娠するようになる。
(つまり、ポリープが先だった人)
ではポリープ切除で結果が出なかった人(つまり、不妊が先だった人)はどうすればいいのか?

・・・・書きすぎちゃいました。ここから先はエビデンスが無いので(無責任なので)公表は控えることにします。が、そんなわけでヒントはいっぱい転がっているようです。

この辺を治療方針に組み込んでいくと、いい作戦がたてられそうな気がしています。
僕はこれを個人的に「ポリープが先か?不妊が先か?作戦」と名付けているわけです。

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