PCOに対する治療の基本的な流れ


PCOに対する治療の復習

2013年のReprod Med Biol誌(日本生殖医学会、日本受精着床学会、日本アンドロロジー学会が発行している英文誌)に、東京医科歯科大学の久保田教授によるPCOのreviewが載っていますので、ここではこの論文の「治療」のところに書かれている内容をまとめておこうかと思います。
元論文へのリンクはこちらです。

リンク先の右上の方にFree inなんちゃらというアイコンがありますね。これをクリックすると、論文そのものが(英語ですが)見ることが可能です。
このページでは、「New criteria of PCOS treatment in Japan」という段落の要旨を箇条書きにしていきます。

右の画像がこの論文の図6をお借りしてきたものです。


【挙児希望がある場合の治療】(1)肥満の治療

前置きとして、この段落の前にPCOにはobese PCOとlean(non-obese) PCO、つまり「太ったPCO」と「そうではないPCO」があります、という解説がなされています。

とのことです。
ということで、PCOはBMIを見てobese PCOなのかnon-obese PCOなのかを見分けることが第一段階です。
いきなりクロミフェンではないんです!
どれだけ体重を減らせばいいのかもこの論文にはちゃんと書いてあります。
loss of at least 10% of body weight
ということで、10%以上の減量です。

で、逆に、non-obese PCOの場合はいかがでしょうか?
上の図を再確認しておきましょう。
「weight loss, exercise」は通っていませんね。
つまり、non-obese PCOなら減量は必須ではないというわけです。
時々いらっしゃいますが、明らかにlean PCOの方が「PCOと言われたので、私もダイエット頑張ってます!」というパターン。
それ以上痩せちゃうと別の意味で良くない気がしますが・・・・、というケース。
PCOなら何でもかんでもダイエット、ではないんですね。

【挙児希望がある場合の治療】(2)クロミフェン療法

【挙児希望がある場合の治療】(3)インスリン抵抗性PCOへのメトホルミン+クロミフェン療法

【挙児希望がある場合の治療】(4)ゴナドトロピン療法による排卵誘発

ということで、クロミフェン抵抗性(クロミフェン+メトホルミン抵抗性)だと、次に考えるのがゴナドトロピン療法です。
それも、通常のhMG誘発とは違って、低用量漸増法というPCOに特徴的な注射の打ち方をします。
高LH血症がベースにあるので、ここに記載されている通りFSH only(LHが入っていない製剤)で打ち始めるのが原則です。
でも、ある程度卵胞が大きくなってくると、LH入りの製剤を好んで使う先生もいらっしゃいますね。

【挙児希望がある場合の治療】(5)LOD

(管理人注:LOD=Laparoscopic Ovarian Drillingの略で、腹腔鏡で卵巣に「穴」をあけるという手術療法です。)

【挙児希望がある場合の治療】(6)体外受精

【挙児希望のない場合の治療治療】

少しだけ解説しておきます。
排卵障害を引き起こすPCO、不妊治療のシーンでは鼻息荒く頑張るわけですが、では、妊娠を考えていない時期は放っておいていいのか?というとそうではない、というわけです。
「子宮内膜増殖症→子宮体癌」の予防をせよ、と書かれていますね。
細かい説明は省きますが、PCOの場合、排卵が起きない(起こりにくい)ので、周期的なプロゲステロンの分泌が起こりません。
エストロゲンだけが単独でジワジワっと出ている状態が続いてしまいます(この状態が"unopposed estrogen"状態)。
すると、エストロゲン依存性腫瘍である子宮内膜増殖症→子宮体癌の可能性が高まる、というわけです。
なので、これを予防しましょう。それが「ホルムストローム」であり「カウフマン(低用量ピル)」ですよ、というわけです。

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