PRL(1):アメリカ生殖医学会の「高プロラクチン血症」患者さん向け説明書
Patient Fact Sheet:Hyperprolactinemia(Prolactin Excess)
アメリカ生殖医学会のHP上に、「高プロラクチン血症」に関する患者さん向け説明書があります。
2007年版が今日現在(これを記載しているのは2014/1)アップされています。
極めてシンプルなのですが、要点がよくまとまっていて非常に素晴らしいです。
これがほぼ「高プロラクチン血症」の全てと言っても過言ではないと思います。
PDFファイルのリンクはこちら。
まず手始めにこれの日本語訳を載せておきたいと思います。
(僕の訳なので、上手に訳せていないところがあったら笑ってお許しください。)
What is Prolactin?(プロラクチンとは何か)
- プロラクチンとは、脳下垂体から分泌されるホルモンです。脳下垂体は、脳の下の方にあります。
- プロラクチンは、成長に関与したり、乳腺の発達に関与しますが、出産後に母乳を分泌するのが最も重要な働きです。
- 通常、血中には少量分泌されていて(男性にも存在する)、プロラクチン抑制因子(PIF)と呼ばれるドーパミンにより、量の調節を受けています。
- 妊娠成立すると、プロラクチン濃度は有意に上昇します。
- 分娩後は、高プロラクチン血症+エストロゲン/プロゲステロンの低下により、乳汁分泌が起こります。
What is Hyperprolactinemia?(高プロラクチン血症とは何か?)
- 高プロラクチン血症とは、妊娠していない女性と男性の血液中に多量のプロラクチンが存在する状態である。
- 女性では、その結果排卵後のプロゲステロン分泌が抑制され、排卵が不順になり、月経周期が乱れ、無月経になったり、乳汁漏出と呼ばれる乳汁分泌が見られるようになる。
- 男性でも乳汁漏出が見られ、勃起不全、性欲減退、そして不妊になる。
- 高プロラクチン血症は比較的よくみられる。
- 生殖年齢の女性で、月経が止まり、FSHが低値だと、1/3が高プロラクチン血症である。
- 乳汁漏出の女性の90%は 高プロラクチン血症である。
What cause Hyperprolactinemia?(高プロラクチン血症の原因は何か?)
- 薬剤性(抗うつ剤、向精神剤、血圧の薬など)
- 生薬(コロハ、ウイキョウ、アカツメクサ)
- 胸郭刺激(手術跡、帯状疱疹、あるいはきつめのブラジャーでさえも)
- ストレス
- 特定の食べ物
- 運動
- 睡眠(プロラクチンは夜に高値を示す)
- 乳頭刺激
- 甲状腺機能低下症
- 下垂体腺腫( 通常非常に小さい、でも高プロラクチン血症の30%を占める)
高プロラクチン血症の1/3は原因不明である。
How is Hyperprolactinemia Tested?(高プロラクチン血症の診断)
- 月経不順/無月経があったり、乳汁漏出があったり、夫婦間に高プロラクチン血症の伴う症状があり妊娠に至らない場合に、医師は血中プロラクチンを計測するよう指示することがあります。
- その結果高値を示すようだと、医師は一般的に空腹時、ストレスが無い時に再検査をするように指示をします。
- その再検査の結果でもまた高値を示すようなら、医師は、甲状腺と腎臓の検査を行います。
- 甲状腺と腎臓が正常なら、下垂体腫瘍の有無を確認するため、MRIかCTを行います。
- もし下垂体腺腫があるようだと、そのサイズにより分類を行います。
- 小さいものは微小腺腫(マイクロアデノーマ)と呼ばれます。
- 1cm以上あるものは、マクロアデノーマと呼ばれます。
How is Hyperprolactinemia Treated?(高プロラクチン血症の治療)
- 治療法はその原因によります。
- 原因不明の場合/マイクロアデノーマ/マクロアデノーマの場合、薬物療法が選択されます。
- 最もよく使用されるのは、Parlodel®(ブロモクリプチン)とDostinex®(カルベゴリン)です。
- 医師は、通常少量より内服開始を指示し、次第に増量し、プロラクチン値を正常レベルにします。
- 治療は妊娠成立まで続行されます。
- 妊娠成立後の中断は医師と相談しましょう。
- Parlodel®のよく見られる副作用は、めまい、吐き気、頭痛です。
- 他には、鼻閉、眩暈、便秘、腹部疝痛、倦怠感、嘔吐、そして稀に幻覚などの神経症状が出ることがあります。
- 徐々に量を増やすことにより、副作用が軽減されます。
- Parlodel®の腟内投与や眠前内服によっても副作用が軽減します(ただし、FDAはこの方法を認可してはいません)。
- Dostinex®は週に2回の内服でよく、副作用も有意に軽いようですが、Parlodel®に比べ高価です。
- それに加え、高容量Dostinex®による弁膜症の問題があります。
- この問題のためpergolideという薬剤は、アメリカ市場から自主回収されました。
- 原因不明または微小腺腫による高プロラクチン血症は治療しない、という選択を選ぶことも可能です。
- 同様に、月経不順あったり、妊娠を望まない場合は避妊用のピルを選択するということも可能です。
- 薬剤で縮小しないような巨大なものでない限り、手術はほとんど行われません。
- 大きな下垂体腺腫の場合、定期的な画像評価が行われます。
- 甲状腺機能以下がある場合、医師は甲状腺ホルモンの補充を行います。その結果プロラクチンは正常化します。
- 薬剤性の場合、原因薬剤の変更を行うことがあります。
- 一部、(原因薬剤は続行され)ホルモン補充療法を追加することがあります。