そんなわけでしつこいですが、「プロラクチンが高いこと」が悪なのではなく、「プロラクチンが高いゆえに下垂体からのゴナドトロピン分泌がおかしくなって(パルスが減って)、卵胞発育不全/黄体機能不全になること」が悪いわけです。
プロラクチンが高くても、下垂体からのゴナドトロピン分泌パルスが正常ならこれが「悪」であるというエビデンスは今のところ無い
という話でした。
では、何でプロラクチンが高くなるのか?
前項では「マクロプロラクチン」という話が出てきました。
でも、それだけではありません。
復習してみましょう。
の、「What cause Hyperprolactinemia?」の所にこうあります。
高プロラクチン血症の1/3は原因不明である。
でした。ちょっと順番を変えて分類してみます。
【生理的変化】
- ストレス
- 特定の食べ物
- 運動
- 睡眠(プロラクチンは夜に高値を示す)
- 乳頭刺激
- 胸郭刺激(手術跡、帯状疱疹、あるいはきつめのブラジャーでさえも)
【病的変化】
- 薬剤性(抗うつ剤、向精神剤、血圧の薬など)
- 生薬(コロハ、ウイキョウ、アカツメクサ)
- 甲状腺機能低下症
- 下垂体腺腫( 通常非常に小さい、でも高プロラクチン血症の30%を占める)
【原因不明】
- 高プロラクチン血症の1/3は原因不明である。
こんな感じです。
つまり、
条件次第では、健康な人でも「高プロラクチン血症」に成りうる(成れる)
ということがご理解いただけると思います。
では、そんな「高プロラクチン血症」を下げてしまうとどうなるか?
前出の論文では「下げたほうがいいのかそのままでいいのかのエビデンスはない」と書いてあることをご紹介いたしました。
このページでご紹介する論文は、ちょっと古いのですが、2000年の論文でこちらになります。
この論文の内容は?というと、「transient hyperprolactinemia(一過性高プロラクチン血症)」という状態を治療してしまう(プロラクチンを下げてしまう)とどうなるか?という話です。
ここで出て来た「transient hyperprolactinemia(一過性高プロラクチン血症)」、聞きなれない言葉ですが、こんな風に書かれています。
と記載されております。
つまり、卵胞が育ってきたり、黄体期にプロラクチンを採血したところ、一時的に基準値を超えてしまっていた状態と考えて良さそうですね。
それでは内容です。
さて、思い出してください。
今までに何回か出てきましたが、プロラクチンは悪のホルモンではない、卵胞発育だったり、黄体形成だったりのシーンに必要なホルモンだということが何度か出てきました。
で、また復習してみましょう。
の、「How is Hyperprolactinemia Tested?」の所にこうあります。
でした。
そうですね。つまり、
「ちゃんと条件整えて再検査して、生理的高プロラクチン血症を否定しなさいよ!」
と書いてあるわけです。
これ、重要です。
僕の乏しい経験で申し訳ないのですが、一回採血して60前後の方でも再検して10代だったケースも何度か経験があります。
「採血一発、30超えは即アウト」ではないわけです。
生理的なホルモンの上昇というのは、当たり前ですが、体が必要と判断したから上昇させているわけであって、地球ができて46億年、宇宙ができて137億年という長い時間の中で、自然淘汰という厳しいシステムにさらされた環境下に作り上げられているのが「生理的な反応」なわけです。
そんな崇高なシステムに対し、ろくなエビデンスも無しに踏み込んで、いい結果がでると考えるほうがおかしい。
神様に言わせれば、「お前、何様のつもりだ?」ってなもんです。
採血のプロラクチンが高かった場合、その上昇が生理的上昇なのか病的上昇なのかを見極めることが大事で、少なくとも、今、僕が知っている限りでは、生理的高プロラクチン血症に介入して好結果となるエビデンスはないとおもいます。もしあったら教えて下さい。
(当たり前ですが、病的高プロラクチン血症は介入するのですよ。)