PRL(5):「高プロラクチン血症治療薬」というのは存在しない


はじめに

【お断り】

治療には「医師の裁量」というのがあり、「必ず薬剤の添付文書に書かれている内容を守れ」というわけではありません。
処方医が自己の責任の上でで処方をしているわけです。
インフォームドコンセントの上処方されている以上、本ページはそれを否定するものではありません。
この点誤解なきようなにとぞよろしくお願い申し上げます。

薬物療法の実際

まずは、最初にご紹介いたしましたアメリカ生殖医学会の説明書を復習してみましょう。

の、「How is Hyperprolactinemia Treated?」の所にこうあります。

(中略)

といった感じです。
まあ、元々がアメリカの話なので、お薬の名前とかが違いますが、もちろん基本は同じです。

日本では以下の3剤がよく用いられていると思います(産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2011 p103より引用)。

ところでドキッ」とされた方も多いかと思います。
弁膜症の問題」ってなに?なに?
はい、解説は、リンク先にお願いすることにします。こちらなんか詳しいですね。

こちらにも書いてありますが、

「一方、カバサールについては、FDA(米国食品医薬品庁)は、「米国ではパーキンソン病に対しては承認されておらず、承認されている高プロラクチン障害に対するカバサールの用量はパーキンソン病(未承認)に対する用量よりもかなり低いため、心臓弁膜症のリスクは少ない」ことを理由に、市場から撤去していない」

というのが、ここで紹介した「アメリカ生殖医学会」のHPの内容なわけです。

で、その次の段落にこんなことが書かれています。

「厚生労働省は2007年4月19日付で、ペルマックスとカバサールについて、添付文書の改訂を指示した。これを受けて「使用上の注意」に、両剤ともに長期間の投与で心臓弁膜症があらわれることがあるため、心臓弁膜の病変が確認された患者などを禁忌とし、投与中の心エコー検査を実施することなどが追記された。」

はい。そうなんです。カバサールの添付文書見てみましょう。
(誤解なきように書いておきますが、この添付文書は0.25mgでも1mgでも同じものです。)

とあります。このことです。
基本的にはパーキンソン病に対し、高容量で用いる場合を想定しての記載だと思われるのですが、僕が読む限りではこの「心エコー」の記載は、パーキンソン病/高プロラクチンの区別は、多分なされていないと思います。どうでしょう?僕の国語力の問題でしょうか?

で、話を続けます。今回の表題である「高プロラクチン血症治療薬(???)」の話です。
カバサール/テルロン/パーロデルの添付文書の「効能/効果」を見てみると、

です。
どうですか?どれも「高プロラクチン血症」とは書いてないです。必ず「高プロラクチン血性排卵障害」または「高プロラクチン血性下垂体腺腫」と書いてあります
そういうことなんです。
つまり、「排卵障害」もない、「下垂体腺腫」もない、単なる採血で「プロラクチンが高い」というのは「効能/効果」のところに記載はありません。

あと、細かいことを書くと、仮に「乳汁漏出症/高プロラクチン血性排卵障害」で内服開始する場合でも、次のように書かれています。(3剤とも書かれています。)

「乳汁漏出症や高プロラクチン血性排卵障害では、投与開始前に、トルコ鞍の検査を行う。」

この「トルコ鞍の検査」というのは、おそらくMRIなりCTなりの画像評価のことを指していると考えられます。

こんな感じです。
添付文書に書かれている内容通りに処方しようとすると、実はこれらの薬剤、ものすごくハードルが高いのです。
これが現状です。

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