精子不動化抗体とフーナーテストの関連性
2014年12月記
精子不動化抗体が陽性だと必ずフーナー不良となるのか?
抗精子抗体(のうちの精子不動化抗体)は、
- 「精子の動きを止めてしまう」ことにより不妊となる。
- PCT(フーナーテスト)不良となる
という印象が強いわけですが、では、精子不動化抗体が陽性だった場合、そのPCTの所見はどのようになっているのでしょうか?
柴原先生が2007年にご発表なさった論文にこの点に関するデーターがあります。
Relationship between level of serum sperm immobilizing antibody and its
inhibitory effect on sperm migration through cervical mucus in immunologically
infertile women.
以下、この論文の論旨です。
- 精子不動化試験を2834人の不妊女性でスクリーニングしたところ、74人(2.6%)で陽性であった。
- このうち、男性因子などが無く、フーナーテストを施行したケースは、精子不動化試験陽性群で31人で、そのうち24人(77.4%)はフーナーテストが異常であった。
- 一方、精子不動化試験陰性群では137人にフーナーテストを行い、異常であったのは28人(20.4%)であった。
- 精子不動化試験陽性群で、その抗体価をSI50で測定した場合、SI50が10以上の高抗体価群は10人いて、その全員がフーナーテストが異常であったが、SI50が10以下の低抗体価群では、21人中14人(66.7%)がフーナーテストで異常を示した。
- SI50が10以上の高抗体価群ではフーナーテストが良好となる例は無かったが、10以下では必ずしもフーナーテストが不良とならない点は、SI50が10以下の群で性交渉(あるいはAIH)での妊娠が望めるということと関連している可能性がある。
- よって、SI50測定による抗体価の評価が治療方針の決定に有用と考えられる。
という内容でした。
非常に勉強になる論文ですね。
いろいろ応用できそうですね。
- 精子不動化抗体を有していても、必ずしもフーナー異常になるわけではない。
と解釈することも可能ですね。
逆にいうと、
- フーナーで異常がないことが、必ずしも精子不動化抗体を持たない、という保証にはならない。(低抗体価なら、フーナーで問題なしとなることもありうる)
と解釈することも可能ということにもなりますね。
- 精子不動化抗体とフーナーは、リンクしているのは間違いないけれども、必ずしも一致するわけではない。
などなど、非常に示唆に富んだデーターとなっています。