HPV-DNA検査の種類と解釈

2014年4月記

今度はHPV-DNAを検出する検査の話。

HPVそのものがいる/いないを調べる検査なわけですが、

で述べた通り「HPVがいる/いない」だけでは情報としてはイケていないのですね。
当然ですが、HPVがいたとして、「それが癌化に繋がりそうなのか?=持続感染なのか?」が大事なわけです。
一過性感染を拾っても、「ふーん。で?」となってしまうわけです。

でも、「HPV-DNAを検出する検査」は結局「いる/いない」の検査なわけです。
なので、検査結果の解釈が非常に重要なわけです。
単に「HPV-DNAが陽性」だけでパニックになる必要は必ずしもないわけです。


HPV-DNAの検査は今の所2通りあります。
以下に記載しますが、「何の目的で検査するのか?」を頭を使って考えて使い分ける必要があります。

【HPV-DNA一括検査】

ハイリスクHPVのどれかに感染していれば陽性に出る検査です。つまり、「何番のHPVに感染しているのか?」はわかりません。
「何かしらのハイリスクHPVがいる(陽性)/いない(陰性)」という形で帰ってきます。
ちなみに保険収載上は360点(=3600円)です。

【HPVタイピング検査】

13種類のハイリスクHPVの「何番に感染しているのか?」を調べるものです。
「陽性:16番+33番」みたいな感じで帰ってきます。
保険収載上は2000点(=20000円)です。

そんなわけで、一口にHPV-DNA検査と言っても、内容も違うし、何より料金のケタが違います。
即ち、頭を使って上手に使い分けないといけないわけです。
以下、どんなケースで使用されるのかを解説してみたいと思います。

HPV-DNA一括検査

「何番かはわからないけど、とにかくハイリスクHPVがいる(陽性) or いない(陰性)」という検査でした。
使うシーンとしては次の3通りが考えられます。

(1)ASC-USトリアージ(保険収載あり)

細胞診でASC-US(つまりLISL疑い)だった場合、この時点ではあくまでまだ「疑い」なわけです。
この時点でLSILの原因となるHPVがいるのかどうか?をチェックしてしまおう、という発想なわけですね。
で、もしHPVが陽性だったら、その先の精密検査に進みましょう、で、HPV陰性だったら、また一年後に再検査しましょう、といった感じです。
賢い使い方ですよね。

ちなみに、細胞診がASC-USだった場合、
推奨1:ASC-USトリアージでHPV-DNA一括検査
推奨2:6か月以内に細胞診再検査
推奨3:直ちに精密検査(コルポスコピー+生検)
とされています。
(出典:日本産婦人科医会 研修ノートNo.90)

(2)併用検診(そもそも検診時に細胞診+HPV-DNA一括検査をやってしまう)(保険収載なし)

「どっちかで引っかかる」確率が上がるわけで、見落としが減るわけですね。
また、逆にどちらも陰性-陰性だった場合は検診間隔を空けることも考慮できるわけです。

(3)円錐切除後の経過観察目的(保険収載なし)

円錐切除後の遺残病変の有無/再発の早期発見/受診間隔の決定に用いよう、というわけです。

HPV-DNAタイピング検査

「○番のHPVに感染している」というのを調べるわけです。
現在はCIN1/2である、と組織診で確定している場合のみ保険適応です。
「○番」まで調べて、何かいいことがあるのか?というと、ハイリスクHPVの中にも、比較的「おとなしい」奴から、比較的「たちの悪い」奴までいるのではないか?という考えがあるからです。

カルチ屋(婦人科癌を専門にしている先生達)は、口癖のように「16番18番」と言います。
(多分「16番18番」で検索すると、HPVのことが引っかかってくるんじゃないですかね?という位常識だそうです)
これらが「要注意2大HPV」なのだそうです。

前出「日本産婦人科医会」は「16/18/31/33/35/45/52/58」の8つと「その他」で分類しているようです。

但し、今の所、世界的コンセンサスには至ってはいないようです。

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