FSD(2):性欲低下のコントロール


FSD(女性性機能障害)のコントロールはカップル単位で考えるべき

ではどのようにコントロールしていくのか?ですが、性機能障害(特にHSDDに)は、男性/女性に限らず「カップルで/夫婦単位で」コントロールしていく必要があると僕は思っています。
で、カップルで/ご夫婦で、お互いの状況把握が必要なのですが、たとえ夫婦とはいえ、お互いの性機能の完全把握って非常に難しい。
女性性機能障害の場合、ご主人様にも状態を把握してもらう必要があるのですが、男性にはなおイメージが湧きにくいと思います。

かく言う僕も所詮は男ですので、女性の性機能/性機能障害が理解できるのか?と言われるとなかなかしんどいわけですし、かつ、性機能に関しては、本当に十人十色で、仮に男性性機能障害の方でも、僕が話を聞いても全容が全く掴めない、なんてこともしばしばです。
(というか、前述のごとく、男性の方がなかなか口を開いてくれないので、骨が折れることが多いです。)
でも、それでは解決の道筋が見えてきません。
では、、男性である僕がどのように女性性機能障害を把握しているのか?をお話ししたいと思います。

それは、病態研究が進んでいて、客観的に把握しやすく、かつ、事実男である僕が把握しやすい「男性性機能障害」と対比して考えると理解しやすい、と思っています。

どういうことか?というと、例えば女性の性的興奮障害(つまり「(最終的に)濡れる」)という現象を、男性の勃起障害(「(最終的に)勃つ」)と対応させて考えると状態を理解しやすくなると思っています(特にご主人様には)。

男性の場合、「勃起」が起こらないと、性交渉が成立しないわけですが、じゃあ、「勃起」は自然に起こるか?というと起きないわけです。
何が必要か?というと、「十分な性的刺激によって惹起される性的興奮」ですよね。

これを多少科学的に論じると、性的反応(性交に限らず、オナニーでも)には4つのフェーズがあるとされています。
excitement → plateau → orgasm → resolution
の各フェーズがあるとするものです。
つまり、性的反応には必ずexcitement(性的興奮)が必要なわけです。。

男性は何によって性的刺激を受けているでしょうか?
そうですね。五感全てですね。(場合によっては第六感も?)
視覚的嗅覚的聴覚的触覚的・そして時には味覚的(?)に(ま、味覚はどうかと思わなくもないですが。ある?)。

こんな感じで五感をフル稼働させて「性的刺激」を受け入れて「性的興奮」状態になり、勃起が成立するわけです。

これを女性の立場に変換すると何となく掴めてくるわけです。
性的興奮を得、「濡れる(露骨ですいません。いい言葉が無いんですよ。英語の教科書には「lubrucation」といういい単語が存在するんですが)」ためには、男性の

の流れと同じ過程が必要で、

というステップが重要なわけです。
で、例えば、勃起障害の場合、
「十分な性的刺激を受ける(そもそもの性欲向上)」+「PDE-5阻害剤を使用する(勃起障害の直接対応)」
の2段構えで行くがごとく、女性の場合も
「HSDD(性欲低下)の改善」+FSD(女性性機能障害)に対する直接的な治療(対応)」
2段構えで行きます。

HSDD(性欲低下)のコントロール:いかに「催淫」するか?

そんなわけで、男性女性に限らず、全ての性機能障害への対応時の基本中の基本が、HSDD(性欲低下)の改善をどのように試みるか?ということなわけです。

もっと世間一般的な言葉を使うなら、「催淫」ですね。
つまり、ご本人さんがいかに催淫するか?なわけです。

ところが、現実には、ご本人さんがそもそもあまり乗り気ではないシーンも多いです。
「え、べつにいいや」
という状況。
やる気なし、というか、そもそも戦闘放棄というか・・・・。
この状態を、僕らの言葉でいうと「セルフエフィカシーの欠如」と表現します。
(セルフエフィカシーとは、簡単にいうと「やればできる!」「やってみよう!」という気持ちですね。)
どのようにご本人さんに「セルフエフィカシー」を持ってもらうか?
この辺が実臨床上のテクニックなわけです。

で、性機能障害の場合、幸いカップル単位で考えるわけですから、パートナーの協力が利用できるわけです。
つまり、パートナーがいかに催淫させるか?が非常に重要になるわけです。
というか、どちらかというと、こっちがキーです。

「カップルで解決する」、これ、本当に重要です。
「不妊治療」の現場で診させていただく「性機能障害」は、パートナーさんもギブアップしちゃっている(パートナーさんも「セルフエフィカシー」が欠如しちゃっている)場合が多いのも特徴ですね。
で、結局AIHなりになってしまうわけですが、よくよく話を聞くと、パートナーさんは本当にギブアップしちゃっている人って少ないです。
「何とかなってくれたらうれしい」
とか、
「いつかは改善してくれるんじゃないか?」
とか。

話それました。戻します。

そうなんですね。
「相手が十分な性的刺激を受けることが出来ているか?」という視点から再検証してもらうんですね。
「女性がある程度痛いのは当然」
という認識は間違っています。
独りよがりはいけません。
真っ暗な中で(視覚)、タバコの臭いをさせて(嗅覚)、黙って(聴覚)、ロクに前戯・愛撫もせず(触覚)、・・・味覚は知りませんが、で、HSDD(性欲低下)が改善するわけがない。
どんな刺激が心理的高揚を誘うのか?どんな体位が心地よいのか?
コミュニケーションも大事ですわな。
相手を思いやる「おもてなし」の精神が大事なわけです。
いかに、相手に「セルフエフィカシー」を持ってもらうか?です。
僕の先輩先生が、「AVをBGMに流しながらするといい」と指導していたことがあります(聴覚)。一理あるかもしれません。
・・・・ま、僕もあまり偉そうなことは言えた立場ではないのですが・・・・。(理論と実践は別物?)
「性欲が湧く」という状況は、その人にとって「安全/安心な」環境が必要です。
それに加えて、「自己尊厳」+もちろん「魅力的なパートナー」
自分も日ごろから魅力的に/ご主人さんも日ごろから魅力的に。
「性欲が持てるような環境整備」ですね。
ぜひ見直してみてください。
どうにもならないことかもしれませんが、収入と女性性機能障害がリンクする、という話を聞いたことがあります。
副作用としてHSDDを惹起してしまうものがいくつか知られています。
有名なのは抗うつ剤のSSRIですね。
あとは、ホルモン系で、LH/FSH→テストステロン分泌系を阻害するものはダメですね。
エストロゲン・ピル・GnRHアナログ・アンタゴニストなんかが典型的でしょうかね。
ステロイドは副腎からのDHEA分泌抑制になりますね。
ちなみに、閉経後の子宮手術時両側卵巣も一緒に取ってしまうことが多いのですが、性機能屋さんは「閉経後卵巣でも残せ」と言います。閉経後でも「男性ホルモン」は分泌しているんだから、というのが、彼らの言い分です。
下垂体機能不全、甲状腺機能低下、やせ/肥満などなど。
ここでも体重コントロールは重要です。

ちなみに、このページを見てくださっている方々(生殖年齢にある方)には直近関係ないかもしれませんが、閉経後にホルモン補充療法を行うことがあります。
この時、推奨されているのが、エストロゲンを「経口」ではなく「経皮」で補う点です。
「経皮」補充の方が、血中テストステロンを低下させにくいことが言われています。
また、同時に経皮的にテストステロンを補う、という治療も試みられることがあります(ただし今日現在、アメリカFDAは長期的予後に関しての疑問点がある、として認可はしていません)。

また、これも現行認可はされていませんが、フリバンセリン*は確かに時々医学論文で目にします。
将来的には認可されるのでしょうか?

*フリバンセリン
10年ぐらい前、ドイツの某製薬会社が発見した催淫剤。
そもそもは抗うつ剤として開発されたそうですが、抗うつ剤としては失格レベルだったそうです。
ところがその副作用として性欲増進作用があるのでは?という話になり、認可待ちという状況のようです。
認可されれば市場規模は大きいと考えられていて、製薬会社側としては何とかしたいようですが、FDAが認可しなかったようです。
でも、また再審査請求をした、という話をどこかで目にしましたが。
認可される日は来るのでしょうか?

基本的に薬物療法に関しては、2012年の論文にこのような記載があります。
Completion of studies of nonhormonal FSD therapies and safety studies of testosterone may result in regulatory approval of such products for the treatment of FSD in the near future.
Expert Opin Pharmacother 13(15): 2131-; 2012.

ということで、今日現在(2014/1)は薬物療法として認可されているものは残念ながらありません。
でも、そう遠くない未来認可され、市場投入される可能性はあるようです。

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