FSD(3):性的興奮障害とオーガズム障害


Sexual Arousal Disorder(性的興奮障害)のコントロール

そういうわけで、各々の性機能障害への対応は、HSDD(性欲低下)への対応をしつつ、各々の状態への個別対応をする、という2段構えで行くわけです。

で、Sexual Arousal Disorder(性的興奮障害)に対する直接的な治療(対応)は、今のところ以下のようにするそうです。
(基本的にアメリカの教科書を元に書いていますので、日本の製品ではないのですが、考え方の基本がわかるかと思います。)

オナニーを治療に使おう、という発想は結構昔から根強くあるようです。
この考えの発想元とされているのが、Masters先生とJohnson先生の1962年の論文に記されている内容だそうです(読んだことないのですが)。
で、改良に改良を重ね、実はアメリカでは、現在、その治療用の医療器具が実際にFDAの認可を受けるところまで行っています(この辺、アメリカって凄い!)。
えっと、その名も「Eros」で、リンクは
です。
ちなみに、使用法がYouTubeに挙がっていて、
です。
(英語ですが、音が出ますのでご注意下さい。艶めかしい音は出ませんが、画像はインパクトあるかもしれません。)
「gentle pressureで」
「クリトリスを刺激するのであって、腟内に挿入しない」
「最低でも、一日一回以上を週に4回のペースで」
などなど、実際のやり方と共に、その期待される効果として
「クリトリス/性器の感受性が改善し、濡れ易くなり、オーガズムが改善し、結果、全体的な性行為に対する満足感が増す」
となってます(6:43のあたり)
「即効性は無い」
とも言っていますね(7:30のあたり)。
要するに、「濡れる」必要も「イク」必要もなく、とにかく「定時間刺激を加え続けることが大事という発想です。
で、徐々に改善させよう、ということなわけです。
別にこのデバイスじゃなきゃいけない、というわけではないでしょうから(FDAの認可はこのデバイスのみのようですが)、この辺参考になさって対応考えてみるのもいいのかもしれませんね。
えっと、これも大真面目に医学論文として検討されたものがあります。
で、商品名が「Zestra」、でリンクが
です。
ルリジサという植物のシードオイルにビタミンCやらEやら色々なものを混ぜた潤滑剤だそうです。
で、これを性交渉またはオナニーのシーンで使用することにより性機能が改善する、という報告です。
まあ、これももちろん商品コマーシャルの意図が強いので、何も必ずこれでなければいけない、というわけでは無いでしょうが、こういった類のものを積極的に使用するというのも選択肢の一つだと思われます。
男性の勃起障害に対応する病態が女性の性的興奮障害なら、バイアグラがいいんでないかい?という発想の元、PDE-5阻害剤の実際の研究報告は多いです、が、「効果あり」とする報告も、「効果なし」とする報告もあり、一定の結論には達してない状況でしょうか。

あと、都市伝説的に有名な(?)某抗真菌剤ですが、医学的エビデンスは無さそうです。(というか、そもそも検討された医学論文が見当たりませんでした。)

Female Orgasmicl Disorder(オーガズム障害)のコントロール

オーガズム障害の定義は
正常な『興奮期(excitement phase)』に引き続いて起こるべきオーガズム期が遅れるか起きない状態が繰り返されること
となります。

『興奮期(excitement phase)』は、先ほど簡単に記載しましたが、再度解説しておきます。
性的反応(性交に限らず、オナニーでも)を4つのフェーズに分類する方式で、
excitement → plateau → orgasm → resolution
の各フェーズがあるとするものです。
確かにうまく分類されていますよね。

オーガズムについて触れておきます。
その手の漫画だのビデオだのでは、出演する女性は必ず最後にオーガズムに達するわけですが、現実とは多少離れているようです。
ある調査によると、そのように性交渉(腟内刺激)のみでオーガズムに達することのできる女性は2~3割だそうで、7割方の女性はクリトリスへの刺激がないとオーガズムに達することはできないそうです。
なので、
「クリトリスではイケるけど、腟内挿入ではイケない」
というパターンは異常ではないとされています。正常。

で、「正常な『興奮期(excitement phase)』に引き続いて起こるべき・・・」なわけであって、厳密には「正常な『興奮期』」が無い場合も定義から外れるわけです。

で、オーガズム障害はさらに「原発性(primary)」「続発性(secondary)」に分類します。

生まれてこの方オーガズムに達したことが無い場合です。
通常、性欲は普通にあります。
原因としてはよくわからないことが多いそうですが、トラウマ/虐待などが関与していることもあるそうです。
何らかのトラウマ/虐待経験が関与している場合はまずカウンセリングが行われることが多いようです(効果があるかどうかは別)。
流れとしては、きちんとした性教育をして、正しいオナニーの方法を学び、実践していただくことになるわけです。
で、正しいオナニーをしても、それでもイケない、という場合を、特に「原因不明原発性オーガズム障害(unexplained primary orgasmic disorder)」と呼びます。
この場合、エビデンスのある治療法は今日現在無いと思います。

ある論文によると、s次のように説明されています。
fertil Steril 100(4): 905-915; 2013)
Unexplained cases may have congenital origins which some consider to be analogues to anosmia or color blindness.
「anosmia」は無嗅覚症、「color blindness」は色覚異常で、congenitalは「先天性」という意味です。つまり、先天性にオーガズムという感覚を感じない状態ということを示唆しています。

What is the evidence for safety and efficacy of devices to treat arousal disorders?

2011年のアメリカ産婦人科学会誌に載っている論文の一段落に、こんなQ&Aが載っているのでコピーペーストでご紹介しておきたいと思います。
Obstet Gynecol 117(4): 996-1007; 2011.

One battery-powered device intended for clitoral therapyhas received approval from the U.S. Food and Drug Administration (FDA). This device is applied directly over the clitoris to create a vacuum to increase blood flow and engorgement (74). Several small pilot studies have evaluated its efficacy in improving orgasm, vaginal lubrication, genital sensation, and sexual satisfaction (75). This device may be best suited for women with arousal and orgasm difficulties, and no adverse outcomes from use of the device have been noted.

要するに、「性的興奮障害に対して安全面/効果面でエビデンスのある治療法は何か?」という問いに対して、前出の「Eros」が恐らく「best suited」だと公に書かれていますね。
arousal and orgasm difficulties」なので、オーガズム障害も、これが最適だろう、とのことです。

で、この商品そのものがどうこう、ではなく、結局「オナニーを練習として使おう」という発想が重要なのだと思います。
例えば、スポーツ選手も、いきなり「試合」ではないわけですよね。
練習を繰り返し繰り返しやって、初めて本番でベストなパフォーマンスが出るわけです。
ということで、
「Gentlyなオナニー、週4回以上!」
本HPの推奨とします!お試しあれ。

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