FSD(4):性交疼痛症、腟痙攣、性回避


Dyspareunia(性交疼痛症)のコントロール

Dyspareuniaの定義は
「ちゃんと『濡れて』いるし、腟痙攣でもないのに性交渉時に痛みを繰り返し感じること」
となります。
痛みを感じる状況(部位)により「pain on entry(挿入時痛)」と「deep pain(深部痛)」があります。

【pain on entry(挿入時痛)】
この場合は、そもそも、「濡れていない」場合、「腟痙攣がある場合」を否定するわけですね。
これらがあれば、そもそも定義から外れます。。
他に婦人科疾患から来る場合もありますね。
何らかの腟-前庭-外陰炎があれば、当然痛みを感じてもおかしくないわけです。

あまり教科書には書かれていませんが、そもそも解剖学的に「狭い」方が確かにいらっしゃると思います。
これは確かに痛そうだ、という方。
あと、個人的経験では、この主訴で拝見して、腟中隔を見つけた事もあります。

【深部痛】
これもやはり婦人科疾患の精査から入っていくべきでしょうね。
内膜症の典型的な主訴なのは有名ですね。

Vaginismus(腟痙攣)への対応法

世間一般で「面白おかしく」揶揄されている(抜けなくなって救急車で云々というやつ)ではないです。
定義的には
「腟の外1/3の部分の筋層に反復性または持続性の不随意攣縮が起こり性交を障害するもの」
なので、性交渉を持とうとすると条件反射的に腟が収縮し、挿入不可になる状態です。

多くは原発性(時折続発性もあるらしいです)で、何らかの性交(というか挿入)恐怖に対する反応なのだろう、何かしらトラウマがあるのだろう、と考えられています。

そんなに稀ではなく、時折いらっしゃいます。
治療としては系統的脱感作療法が行われるようです。

Sexual Aversion Disorder(性嫌悪)への対応法

で、最後に「性嫌悪」です。
「性嫌悪」は僕も何人か拝見したことがあるのですが、皆さん、ご主人さんをごくごく普通に愛してらっしゃって、ごくごく普通に妊娠もしたいと考えてらっしゃいます。一見普通の女性です。
但し、セックスを強く拒否します。
で、よくよくお話を伺うと、やっぱりトラウマがあります。
レイプ体験が多いですかね。
で、とにかくセックスが怖くて怖くて仕方がない。
大概涙ながらにおっしゃって下さいます。
で、大概皆さん、
「ご主人さんに申し訳ない」
と、おっしゃいます。

一方、ご主人さんに個別にお話しを聞いてみると、そんな奥様の状況を良く理解なさっています。
僕なんかがお話することはもう無い状況。

まあ、もちろん僕の前にいらっしゃるカップルは、「妊娠したい」という状況まで行っているわけで、バイアスがかかっているでしょうから全例がそうではないのかも知れませんが。この状態を「disorder」、つまり「性嫌悪」とすることにどうも今一つ納得がいかないわけです。
いろんな教科書なり論文なりを読むと、「性嫌悪」あるいは、時には「性嫌悪障害」とまで書いてあることがあります。
この状態で「セックスから逃げ出したい」という状況は本当に「」なのか?「障害」なのか???
つまり「異常」なのか?改善すべき状態なのか?改善を試みるべき状態なのか?
今一つわからん。

個人的にはそんな感じです。

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