正しく適正回数オナニーするって、マジで大事

人間も所詮動物というか生物である以上、「生殖を行う」「子孫を残す」という行為は必要であり、「本能」と呼ばれているわけです。
他の種の生物を見ていると、結構な割合で「生殖を行う」為に努力していますわな。
また、ルールはあるのでしょうが、我々よりはよっぽど「気ままに」生殖行為が行えているように見えます。

でも、(残念ながら?)我々人類は彼らのように「気ままに」生殖行為は行えないわけです。
街中歩いていて、好みの異性がいたとして、そのまま生殖行為に突入したら、もれなくお巡りさんのお世話になってしまうわけです。
また、パートナーも、残念ながら(?)いいか悪いか通常一人しか選べない状況になっており、大多数はこのルールに則っているわけです。

「理性」という言葉で片付けられていますが、そんなわけで我々人類は、動物としてそもそも備わっている能力に比べ、実際の生殖行動を行える機会は、おそらくはるかに少ないですわな。
即ち、現代社会の秩序の中で生きるためには、動物として備わっている「性欲」という能力を「押し殺して」生きて行かねばならないわけです。
逆にいうと、現代社会の秩序は個々の性欲を押し殺すことを要求します。

そうした現状から、我々(の多く)は、自らの性欲をコントロールする手段としてマスターベーション(オナニー)を用いるわけですね。
当然ですが、節度を持って行っていく分には決して悪いことではないです、というか、正常な社会生活を行っていくうえで必要なことなのです。

箸の持ち方、鉛筆の持ち方、はさみの渡し方etc etc、日常生活に必要な行為というのは誰かが熱心に教えてくれて、「正しい」とされる方法を教育してくれるわけですが、こと「オナニー」に関しては、日常生活に必要な行為なのに、「正しい」とされる方法を誰も教えてはくれません。
箸の持ち方、鉛筆の持ち方なんか、あれほど熱心に教わるのにもかかわらず、怪しい人は沢山いますよね。
誰も教えてくれない「オナニー」なんか、もっと「個性的」になる人が多くいるのも当然なわけです。

「オナニー」がある程度「個性的」であっても、日常生活に触るケースは多くはないわけですが、一部「個性的」ゆえに生活に触るようになるケースがあります。
そんなケースをしばし考察してまいりたいと思います。

腟内射精障害の最大の原因は「オナニー法」

まず男性からでは、腟内射精障害という性機能障害があります。
オナニーで射精することはできる。勃起障害はないので、女性の腟内に挿入することもできる。でもいつまでたってもイケない(腟内で射精まで至らない)、というパターンです。
この一番大きな理由が、ちょっとだけ個性的なオナニー法にあると考えられています。

男性のオナニーの方法で「推奨されている(?)」のは、「スラスト運動による用手法」です。
ただし、誰も教えてくれない。
自らこの手法に到達しなければならない。
「みんながこの方法」にはならないわけです。
箸/鉛筆ですらならないのに、なるはずがありません。

典型的なのは、「床オナ」「壁オナ」と(ネット上で)呼ばれている方法です。
壁とか床に押し付けてオナニーする方法ですね。
Push法」と言います。
あるいは「スラスト運動」でも、強烈に握力が強い場合など。
これらの場合は「イクための閾値」が高くなり過ぎて、(それに比べると)腟内挿入で得られるマイルドな刺激では足りなくなってしまうわけです。

他には「足ピン」と呼ばれている方法(というか体勢)など、「ある一定の体勢じゃないとイケない」状態になってる方もいらっしゃいます。
性交渉時には、その体勢が取れないのでイケない。

などなど、やや特徴的なオナニーをするパターンの方が6~7割だそうです。
(あとは「心理的」とされていて、「一人じゃないと集中できなくてイケない」とか。ちなみに「タイミング療法」を指導され始めたらイケなくなった、などというパターンもあります。)

そんなわけで、厳密には「病気」では無いのですね。
特徴、というか個性というかそんな感じ

ところが、「腟内射精障害」という状態があることを知らないご本人さんは深刻です。

大体こんな感じ。

で、してもイケないので、奥さんに対しても、そういう自分の姿を見られたくない、悟られたくないとなり、大概「セックスレス」になっています。

一方で奥さんの方は、「夫が何かおかしい」とは気が付いていますが、「何か?」がわかっている人は稀です。

といった感じ。時には、

みたいな方もいらっしゃいました。
何となく何かがおかしい。
でも男の人のことなので良くわからない
、といった感じです。

で、今までは「セックスレス」でも、まあまあやってこれた。
でも、いよいよ「子供が欲しい」となってここが問題点となって「不妊屋」にいらっしゃるわけです。

まあ、不妊屋としてはAIH(IVIなりIUI)で解決可能なことがほとんどなのでそれはそれでいいのですが、そこで止まってしまっては「どくさま」流としてはつまらないので、僕はここに首を突っ込んでいきたいわけです。
いや、そうですよね。もちろん「挙児希望」が第一なのかもしれませんが、奥さんにだって当然性欲はあるわけで、でも夫がしてくれない(ご主人さんとしては、自分なりに必死になって隠しているわけですが)ことに多かれ少なかれ不満を持っているわけです。
またご主人さんも「腟内射精」が普通にできるようになれば、それにこしたことはない、と考えているわけです。

この状態をAIHなりで解決して「さようなら」では、溺れる人を先端技術で救い上げただけで、そのあとの対応をしないで放置しているのと同じだ、とおっしゃっていた方がいらっしゃいました。
まさにその通りだと思います。

但し、この「腟内射精障害」は、その改善に一苦労します。

「オナニーをしないこと」が女性性機能障害の一因になりうる

続いて女性側の話。

女性性機能障害(FSD)の分類は、2013年に改定されて、DSM-5分類というのが用いられるようになっていて、3種類に分類されます。

で、女性の場合は「オナニーをしないこと/したことが無いこと」が最終的に日常生活に触ってくることがあります
何らかのきっかけで性回避となり、
「そんなことしなくてはいけないのか?」
「そんなことしてはいけないのじゃないか?」
といった感じ。
で、そもそもオーガズムを感じたことが無いという方、結構いらっしゃいます。
「濡れない」というケースもありますね。

御結婚なさるんですが、これがまた不思議と「あまりお上手じゃない御主人さん」と結ばれます。
(まあ、そうなった結果問題が露呈してきているだけなのでしょうが。)
「自分が勃起さえすればあとは入れるだけ」パターン。
できるわけがない。

で、
「子供が欲しいんですが、性交渉が持てません」
「入るは入るんですが、痛くて苦痛です」
という感じでいらっしゃいます。

このパターンも、
「じゃあ、オナニーするようにすればいいじゃん」
と思うでしょ?これがそうは簡単には行かないのですよ。
長いこと精神的に性回避状況にあるので、「はいどうぞ」でやってくれる訳が無い。

治療法として、確かにマスターベーションの励行があるわけですが、そこまでこぎつけるのが難しいのです。
幸い、カップル単位で考えることができるので御主人さんとともににお勉強していただくというのが使えます。
(ちなみにやり過ぎも絶対ダメです。男性の「イかせなきゃ!」「イケ!」「なんでイかないんだ?」というのは女性にとって逆に凄いプレッシャーになってしまいます。お心当たりのある御主人さんはお気を付けあれ)

話はそれますが、歴史的には、バイブレーターがヒステリーの治療器具として開発されたというのは有名な話ですね。

「オナニーは日ごろの練習、セックスは甲子園の本番」
という話を聞いたことがあります。
オナニー不足/嫌悪感がFSDの一因となることは事実あるのです。

Everyody fucks(みんなやってる)、一人で悩まなくてもいい

そんなわけで、石器時代でもない、縄文時代でもない、アメリカでもない、アフリカでもない、現代日本の「社会」の中で生きて行くためには、男も女もマスターベーションを上手に利用するのは必須となっているわけです。
「理性的」な現代日本の中で、我々自らに「動物」として備わった「生殖機能」を保ち続けつために、「正しい」とされる方法(?)で「正しい」とされる回数(?)のオナニーを行うということは冗談じゃなく真剣に重要なのです。

僕は30歳40歳になって困り果てている方を拝見するわけですし、彼ら/彼女らを何とかしたい、と奮闘するわけですが、当然予防も大事です。
性教育、できれば中学生位に「正しい」とされる方法(?)での「正しい」とされる回数(?)の真面目なオナニーを教育すべきなのでしょう。
将来困らないように、必要性からやり方からちゃんと指導していく「誰か」が必要だと思うのです。

学校の先生?養護教諭?
ハードル高そうですわな。
産婦人科医?
同僚の女医さんが時々行っているようです。
「とにかく自分の体を大事にしよう」「避妊しよう」と女の子に呼びかけているそうです。
是非とも正しい「やり方」を指導してあげてほしいものです。

性機能学会の演題で、泌尿器科の先生が、男子生徒を対象に「オナニーのやり方教室」を開いたとの報告がありました。
その報告によると、そもそも父兄、教師が「腟内射精障害」という病態に関する知識がなく、マスターベーションの指導も含めてその重要性を認識できた、という意見が多かったとのことです。

個人的にSystem of a dawnの「Violent Pornography」が好きだ、と何度か書きました。
あんまり上品ではないですが、その歌詞の一部がこちら。
(ちなみに曲そのものはYou Tubeでどうぞ)

Everybody, everybody, everybody livin' now.
Everybody, everybody, everybody sucks.
Everybody, everybody, everybody livin' now.
Everybody, everybody, everybody fucks.

Everybody, everybody, everybody livin' now.
Everybody, everybody, everybody dies.
Everybody, everybody, everybody livin' now.
Everybody, everybody, everybody cries.

みんなやってるんですよね。みんな。
それを「隠そう」とする社会風潮が、少数なのかもしれませんが、「苦しみ」を生み出しているのは事実です。
(ま、隠さなすぎも問題ですが。)

逆に、「夫(妻)が何かおかしい」と感じたら、夫(妻)は実は一人で苦しんでいるのかもしれません

不妊治療もパートナー単位で考えると格段と面白くなりますが、性機能障害はパートナー単位で考えるともっとずっと発展させることができると思います。
そんな感じです。

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