化学的流産をどうとらえるべきなのか?を考察してみる

2014年4月記

化学的流産とは?

HPをご覧下さった方からご質問を頂戴することがあります。
純粋に「不妊」といった方も多いのですが、いわゆる「不育」に関するご相談も結構頂戴します。
その中でも結構多いのが、いわゆる「化学的流産」ですね。

「定義」としては、日本産科婦人科学会が公的に出しているものによると、

と記載されております。

妊娠反応検査薬が広く使われるようになり、特に妊娠を待ち望んでいる方々は、黄体期後期になると、もう居ても立っても居られない気持ちになり、必死になって「妊娠反応検査薬」を連日のように試されている方も多いと思います。
ネット上では「フライング」と呼ばれている行為ですわな。
気持ちはよくわかります。
すると、「うっすら・かすかに・ぼんやりと・なんとなく」反応が出る事があるわけです。
もう心臓はドキドキなのでしょう。寝ても覚めても妊娠反応のことが気になって仕方がない。
毎日毎日妊娠反応をひたすら繰り返す。
昨日より濃くなった/薄くなったで一喜一憂。
そうこうしているうちに、次第に雲行きが怪しくなってくる。
妊娠していると来ないはずの「出血」が・・・。
「何で?何で?」
と思いながら、段々いつもの状態となり、反応のあった妊娠反応も消え・・・・。
といった感じだと思います。

これを毎周期のように繰り返していると、2回3回と同じような事態が起こる場合がある。
「やっぱり私は何か変だ!!!」
と不安になり、といった感じだと思います。

では、こういった「化学的流産」、どう考えるといいのでしょうか?
ちょっと考察してまいりたいと思います。
今回読んでみる論文は、古いのですが、こちら。

です。(この論文を選んだ理由は後ほど)

化学的流産の頻度

とのことです。
どうでしょうか?この数字?

化学的流産を考察してみる

では、この論文の結果を考察してみましょう。

奥様の年齢平均が30歳とのことですから、年齢因子は弱いわけです。
で、、そういった年齢因子の無い群でも、化学的流産も含めると全妊娠の実に31.0%が流産しているわけです。

ピンと来ませんかね?もっと噛み砕いて書くと、こんな感じ、ということです。

ということです。
これが「フライング妊娠反応陽性」の時点からみた、その後の転機の現実なのです
しかも、平均30歳の、健康な、その後多くの方が出産に至っている母集団でのデーターです。
もちろん年齢因子その他もろもろが加わっていけば、この確率は「負」の方に触れるのは容易に想像されると思います。

そうなんですね。御自身が当たってしまうと悔しいし不安になってしまうし気持ちはよくわかるのですが、実は普通に起こっている現象なんですね。

そんなわけで「フライング妊娠反応」、妊娠を切望している方からすると手を伸ばしたくなる気持ちはよくわかるのですが、どうでしょう?
健康な年齢因子の弱い方がやっても、この程度の信憑性です。

今、妊娠反応検査、薬局で買うと一回幾らぐらいなんですか?
最近は安いの出てるんですかね?
・・・でも、「グッと待て」と言われても難しいんですよね。はやる気持ちが抑えられないんですよね。
でも所詮そんな程度の確率です。よくよく御理解いただいて御使用ください。


僕が実臨床で拝見している患者さんも「化学的流産でした」と報告して下さるシーンがあります。
御本人様は当然ひどくがっかりしていますが、特にタイミング/AIHの場合、僕はこれをpositiveに捉えています
「オシ!来た!」
と。
だって、「着床まで行ってる」わけですよね。

この論文にもありました。

ね?「おっしゃ!いけるぞ!」という気になりませんか?
僕だけですか?
(毎度無責任発言で本当に申し訳ないです。)


(ちなみに化学的流産を説明するときに僕がこの論文を使うのは、この分野の第一人者、僕が勝手に尊敬している杉先生がHPで解説に御使用なさっておられる論文だからです。あしからず。)

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