不育症(4)血栓性素因の検査、治療

2014年9月記

本ページの出典・引用元は、厚生労働科学研究費補助金「不育症治療に関する再評価と新たなる治療法の開発に関する研究」班により平成23年3月に発表された「厚労研究班の研究成果を基にした不育症管理に関する提言」、および、平成24年3月に発表された「反復・習慣流産(いわゆる「不育症」)の相談対応マニュアル」です。

同研究班のHP、及び、出典・引用元の提言/マニュアルのリンク先は以下です。

以下、太字は上記提言/マニュアルからの引用、細字は本HP管理人の個人的記載事項という記載方式となっております。

血栓性素因の検査

この血栓性素因の検査で挙げられている項目、「プロテインなんちゃら」とか「抗なんちゃら抗体」とか、非常に化学チックな名前が出てくるのですが、(僕ら医者はさすがにある程度何なのかは知っていないとまずいですが)皆さんは各々の詳細を知る必要は全くないです。
呪文のように「こんな項目調べるんだ」位で流してもらってOKです。

<不育症一次検査>

・・・不育症のリスク因子の検査として、十分な科学的根拠の認められる検査

の1つ以上が陽性で、12週間以上の間隔をあけて再検査しても再度陽性となる場合

2回とも陽性で「抗リン脂質抗体症候群」、陽性から陰性化した場合は「偶発的抗リン脂質抗体症候群」

<選択的検査>

・・・十分な根拠があるとは言えないが不育症との関連性が示唆される検査

はい。一次検査、つまりエビデンスのはっきりしているのは、抗リン脂質抗体症候群のみなんですね。
それも「12週間以上あけて2回とも陽性」で初めて確定、とされています。
これ結構重要で、確かに1回引っかかっても、12週(つまり3か月)後に再検査すると「正常範囲内」で帰ってくること(=偶発的抗リン脂質抗体症候群)結構あります。

他のものに関しては、選択的検査、つまり、示唆はされているが、十分な根拠があるとは言えない、というわけです。
そう。有名なプロテインSも第Ⅻ因子活性も抗PE抗体も選択的検査、つまり、示唆はされているけど、十分な根拠がある、というレベルではないんですね。

ちなみに、もうひとつ有名な、「抗PSIgG/IgM抗体」(抗フォスファチジルセリン抗体)については、以下のように記載されています。

偶発的抗リン脂質抗体症候群陽性例、抗PE抗体陽性例、抗PS抗体陽性例については、治療の必要性・有効性ともに、専門家の間でも、まだ結論が出ていません。

血栓性素因保有時の治療方針

ということで、ガイドラインに従うと、Max「選択的検査」まで行ったとして、不育症で問題となる可能性のある血栓性素因は、

ということになりますね。
各々、治療法は、以下のように記載されています。

<抗リン脂質抗体症候群>

<プロテインS欠乏症>

<プロテインC欠乏症>

<第Ⅻ因子欠乏症>

低用量アスピリン療法単独でよいのか?低用量アスピリン療法+ヘパリン療法で行くべきなのか?が非常に明確に記載されていて、僕個人的にも大変助かっている虎の巻です。

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