いわゆる生理不順の方でお話を伺うとよくいらっしゃるパターンです。
月経中などののホルモンを採血して、「ホルモン値は正常」という説明を受けた、というケース。
で、これを「ホルモン状態(内分泌環境)は正常」つまり「異常がない」と思い込んでいるパターン、結構多いです。
全然違います。
「採血の結果、ホルモン値(この場合、FSH/LH/E2/Pといった感じでしょうか)が正常範囲に入っていた」という状態は「生殖内分泌環境に異常がない」ということを全く担保してくれません。(「全く」は少し言い過ぎかもしれませんが)
というか、「ホルモン採血」という検査が、生殖内分泌面ではあまりに無力な検査過ぎるのです。
本ページではこの辺を解説してみたいと思います。
【管理人注】
本ページでの「月経不順」とは、正確には「稀発月経と無月経」を念頭に置いております。「稀発月経」とは月経周期が39日以上、「無月経」とは3か月以上のことです。お間違いなきようにお願いします)
で、今までの流れを復習していただくとその理由が見えてくると思います。
一応リンクを張っておきます。
辺りでしょうか。
とにかくこの辺を理解するポイントは、
なので、
「仮に濃度が正常であっても、パルス状分泌の頻度が正常であるということは担保されない」
のです。
「採血の結果、FSH 5.6でした」
では、一日何回パルス状分泌があったのかは全くわからないわけです。
即ち、前出のアメリカ生殖医学会の図を噛み砕いて書き直すと、
排卵障害による月経不順/無月経があり、ホルモン値(特にFSH)が正常値ならGn-RHパルスの回数異常を疑いなさい!
というわけです。
では、実際どのように考えるべきなのか?
前出のアメリカ生殖医学会の論文を読んでみたいと思います。
Normal or low FSH Levels(FSHが正常か低い場合)
The most common diagnostic categories are hypothalamic amenorrhea and polycystic ovary syndrome, and each case similar but less common conditions must be excluded.
Hypothalamic amenorrhea is characterized by inconcictent GnRH drive, while in polycystic ovary syndrome GnRH pulses are persistently rapid or increased, leading to excessive LH synthesis, hyperandrogenism, and impair follicular
maturation.
といった具合で書かれています。
つまり、
視床下部性排卵障害はGnRHパルスの減弱、PCOはGnRHパルスの増加
ということですから、
「FSHが正常なら、GnRHパルスが増えすぎているか減りすぎていると考えなさい」
と言っています。
で、視床下部性とPCO、この見破り方が実は結構微妙なことも多いです。
本当に区別がつかないことも多い。
当初「PCOかな?」と思っていたら実は違った、なんてこともある。
でも、この過程が非常に興味あるところなのです。
そんなわけで、生殖系のホルモン、特に視床下部-下垂体系のホルモンは非常に曲者です。
今までねちっこく書いてきたとおり、「パルス状分泌」の「強さ」のみでなく、何よりも「頻度・回数」が勝負なわけですが、たった一発のホルモン採血では、この評価はほぼできません。
言わば、4次元の世界を2次元から見ようとしているような感じ。
「無駄」とは言いませんが自然現象を見通すためには、あまりにもレベルが低すぎる検査なわけです。
これと同じことが「黄体機能検査」と称して行われているエストロゲン/プロゲステロンの採血のシーンにも当てはまります。
に解説しておきましたので、ご興味がおありでしたら、ご参照ください。