卵管留水腫と不妊(2)

2012/11記

腹腔鏡下卵管クリッピングの実際

「卵管クリッピングというののイメージがわかない」
といったご意見を何通かいただきましたので、実際をご覧いただこうかと思います。

写真は僕が実際に担当させていただいた方であり、また本HPの熱心な読者様でもあった方です。
写真の本HPでの使用を快諾していただいております。ありがとうございました。
(ちなみにこの方、この後ARTで無事妊娠となりました。ARTはもちろん、分娩も僕が担当させていただきました。肩の荷が下ろせた状態です。ヨカッタ。ヨカッタ。元気に育ってますか?)

左卵管留水腫です。
右下にあるのが子宮。
左半分やや下に見えるのが留水腫になった卵管です。
鉗子で持っているのが卵管で、卵管の下にクリップを通すために穴をあけたところです。
で、一個目のクリップをかけに行くところです。
一個目のクリップがかかりました。
なるべく子宮に寄せてかけるのがポイントです。
僕は一応ダブルクリップにさせていただいています。
2個目のクリップをかけに行くところです。
で、かかりました。
 これで「毒水」が子宮に流入しなくなるわけです。

Essure

今のところ日本では、この「毒水」の流入を防ぐ手段が「卵管切除」か「卵管クリッピング」です。
どちらでやるにしても、最低腹腔鏡操作が必要なわけです。
「腹腔鏡は侵襲が低い」とはいえ、やっぱり手術ですし、小さいなりに開腹が必要なわけです。

それに対し、欧米では「ESSURE」という手技を用い、卵管閉塞を起こさせ、「毒水」の子宮内への流入を防ぐ、という方法が盛んにおこなわれているようです。
「ESSURE」は、元々は「避妊具」として開発されたものです。
「子宮鏡」で卵管内に専用のコイルを詰め、数か月待つと卵管が閉塞するようです。
で、これが「卵管留水腫の毒水を子宮内に流入させないように」応用されており、ボチボチ論文もでてきており、成績も良好のようです。
何より子宮鏡だけで行けるので、「腹腔鏡すら要らない」のがすごいですよね!
日本では認可方向の動きが出ているとは聞きませんが、5年後、10年後には現実のものとなっているといいなあ、と思っています。

では、実際にご覧いただきましょう!
(リンク先はyoutubeです。音が出ますので、ご注意ください。リンクが切れていたら、you tubeで「Essure」で検索してください。)

そういうわけで、卵管を詰めて、永久避妊になる、という説明をしています。
元々は、避妊具なわけですが、この「卵管閉塞を起こす」作用を使うわけですね。

で、実際の映像です。子宮鏡で子宮の中を見ている状態になります。
多分、最初に詰めているのが右卵管、次に左の順だと思います。

実際の医学論文では、例えば、こちら。

Fertil Sterilに載っています。
そういうわけで、卵管留水腫を「卵管切除」でも「卵管クリッピング」でもなく「ESSURE」で詰めています。

この「ESSURE」の情報も、本HPの読者様から頂戴しました。
お恥ずかしながら、僕も教えてもらうまで知らなかったです。
初めて見たとき、画期的だと思いました。
合併症の報告もあり、すぐに日本で、とはいかないかと思いますが、導入されれば、より低侵襲になりますね。
今後に注目しましょう!

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