子宮内容除去術(掻爬)後に、子宮内膜が厚くならなくなるケースが時々いる、という話の続きです。
イランの「赤新月社」の雑誌でしょうかね。
内容的にはもっとIFの高い雑誌に載っても良さそうな内容なのですが。
です。
いつものごとく箇条書きにしていきます。
であった。
- 1回:排卵前日で9.83±0.47mm、排卵後5-7日目で9.64±0.49mm
- 2回:排卵前日で8.90±0.92mm、排卵後5-7日目で8.48±0.96mm
- 3回:排卵前日で7.42±0.18mm、排卵後5-7日目で6.32±0.15mm
- 4回:排卵前日で7.40±0.07mm、排卵後5-7日目で6.90±0.04mm
とのことでした。
日常何の疑問もなく行われている「子宮内容除去術(掻爬術)」が内膜へ及ぼす影響にも十分注意が払われるべきなのでしょう。
ちょっとバックグラウンドをお話しておきます。
ごく初期で、一定の条件を満たす子宮体癌と、その前癌病変と考えられている複雑型子宮内膜異型増殖症では、原則の治療は子宮全摘なのですが、厳格な条件下で「妊孕性温存療法」が行われることがあります。
この治療過程、詳細は省きますが、「高用量MPA療法(黄体ホルモン製剤)」というのを行います。
高用量の黄体ホルモン製剤を何週間も飲み続けて、その間何回も「子宮内膜全面掻爬」と言って、掻爬を繰り返すんですね。
で、その結果、癌なり増殖症が消えたら妊娠を許可する、というものです。
この過程で何回も何回も掻爬を繰り返す必要があるので、癌なり増殖症が消えた後に内膜が非常に薄くなり易いとされております。
(ただしこの場合、内膜の菲薄化を起こす原因は掻爬だけなのか?MPAも内膜萎縮の原因になるのではないか?という議論もある点も付け加えておきます。)
で、第57回日本生殖医学会(2012年11月8~9日:長崎)で、この増殖症~子宮体癌の妊孕性温存療法後の妊娠例と非妊娠例の検討の報告がありました。
演題番号P-320で、慶応大の井上先生のご発表です。
で、発表の内容ですが、
とのことでした。
ちなみに、その次の演題P-321で、松江市立の田頭先生の演題で、同じ子宮体癌のMPA療法後にhMG-hCGで治療した症例報告が載っております。この方は、MPA療法中の掻爬は全5回で、hCG投与時の子宮内膜厚は3.9mmと記載されております。
子宮内膜厚が本当に必要なパラメーターなのかどうかは未だに議論があるところではありますが、まあ、薄いよりはそれなりの厚さにこしたことはないのでしょうね。