英国国立医療技術評価機構の生殖に関するガイドラインの要約

BMJ(英国医学雑誌)の2013年2月号に

というのが載りました。これを和訳(意訳?)したのが本ページの内容です。
結構インパクトのある内容が書かれていますので、2013年、世界ではどのように考えられているのか?を勉強してみましょう。
(我ながらちょっと訳が怪しい所がありますが、論旨は間違っていないと思いますので、笑ってお許しを!)

Information on conception(妊娠をお考えの方へ)

女性の年齢が40歳以下なら、避妊をしない通常の性交渉をしているカップルの80%は1年以内に妊娠すると考えられています。
そして、最初の1年で妊娠しなかったカップルの半数が2年目で妊娠すし、この時点で累積妊娠率は90%になります。
性交渉は2~3日毎に行うことで妊娠率が上昇します。
男性では、過度のアルコール摂取、喫煙、精巣温度の上昇などが関連します。 (下着を緩やかなものに変更することによる効果ははっきりしてません)。
女性では、現在の喫煙および喫煙歴、BMIが30以上で無排卵、BMIが19以下で月経不順があるか無月経の場合などが関連します。
不妊症支援団体に相談してみてもいいかもしれません。
不妊の問題は精神的ストレスになるので、カウンセリングを受けてみてもいいかもしれません。

Defining infertility and referral for specialist assessment and/or treatment(不妊の定義および受診のタイミング)

36歳以上の女性
明らかな不妊原因がある場合、または不妊に関連するような既往がある場合
検査結果により一般不妊治療ではほぼ妊娠の可能性がなく、唯一体外受精のみが可能性があるという状況だった場合

Assessment options(検査)

黄体期中期(28日周期ならday21)に血中プロゲステロンの測定を受け、きちんと排卵が起こっていることを確認してもらいましょう。
月経が不順なら、FSHとLHを測定してもらいましょう。
(骨盤腹膜炎、子宮外妊娠、子宮内膜症などの)共存疾患がなければ、卵管造影ないし超音波下卵管通水テストを、あれば、腹腔鏡下通水テストを受けましょう。

Treatment options(治療)

ルーチーンでAIHを受けるのは止めましょう。
(クロミフェンやレトロゾールなどの)経口排卵誘発剤は止めましょう。
避妊せず通常の性交渉を2年間行っても妊娠しないなら、体外受精を考えましょう。
ルーチーンでAIHを受けるのは止めましょう。
トータルで2年間は性交渉による妊娠をtryしてみましょう。
クロミフェン療法
メトホルミン療法
クロミフェン療法+メトホルミン療法
排卵誘発と癌の進行の関連性は判明していません。
排卵誘発で生まれた子供への(癌を含めた)短~中期的な副作用は、判明していません。
母児における長期予後については未だに解明されていません。
女性側の年齢が上昇すれば体外受精後出産率は低下します。
妊娠出産既往があるなら、体外受精はより効果的です。
HFEA(管理人注:そういったイギリスの独立規制機関ですな)のガイドラインに則った、体外受精およびその後の妊娠に対する利点・欠点の説明を受けましょう。
体外受精であろうと顕微授精であろうと、長期的リスクは低いですが、母体の境界悪性卵巣腫瘍の若干の増加の可能性は否定できていません。
生まれてくる子供の長期的リスクは低いです。
40才未満の場合、3周期を考えましょう。ただし、治療期間中に40才になってしまったら、(その時点から)更なる治療周期に入ることはお勧めしません。
40-42歳女性の場合は、今までに体外受精を受けたことがなく、卵巣予備能が良好で、治療およびその後の妊娠のリスクをご承知いただけるなら、1周期受けてみてもよいでしょう。

管理人の感想

以上がイギリスのガイドラインです。
日本の「常識(慣習?)」で考えると、結構びっくりする内容多いですよね。
いわゆる「ステップアップ」という考え方はほぼなされていない様子ですね。
一方で30歳代中旬~の「急げ!」的情報が強めなのと、体外受精の回数的限界が強調されているのと。
あとは、40歳代の方にはかなり厳しい内容ですね。
多分、この辺はお国事情があるんだと思います。
僕は詳しく知りませんが、保険とか医療費がらみなどの、いわゆる「大人の事情」が働いているのかも知れませんね。

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