ヘリコバクター・ピロリ(あるいはピロリ菌)って聞いたことありますよね。
胃の中に存在しうる菌で、胃炎をはじめとした色々な消化器病の原因になる、といった感じで有名だと思います。
僕なんかの青春時代には、「爆風スランプ」が「ヘリコバクター・ピロリ」という曲を出していました(you tube辺りで検索してみてください)。
Wikipediaから図を借りてきました。こんな感じ(右図)だそうです。 Wikipediaの解説文を読むと、 「・・・長軸の両端(極)に、それぞれ4-8本の鞭毛(極鞭毛と呼ばれる)を持ち、この鞭毛の回転運動によって、溶液内や粘液中を遊泳して移動することが可能である」 とのことです。 |
「ふ~ん」
で終わってしまう人が多い中(僕もその一人なのですが・・・)、
「これ、なんか精子に似てね?」
と考える方がこの世にはいらっしゃるらしく、さらには、
「ヘリコバクター・ピロリに感染している人は不妊になり易いんでないかい?」
と大真面目に研究なさった方がいらっしゃるようで。
本ページでは、そんな方々の研究成果を見てみたいと思います。
【管理人注】
そんなわけでまとめてみますが、本ページの内容は今のところ、あくまでも一部の研究者が論じている「説」に過ぎず、とてもとても「エビデンス」と呼べる代物ではありませんのでご注意下さい!
また、 このページの内容をどう捉えるかは、皆様個人個人の自己責任でお願いします。
このページの内容は、あくまで「こんな論文もあるよ」という紹介のみです。
僕が何かを推奨しているわけではありませんので、その点十分ご注意下さい。
で、真面目に「ピロリ菌」と「精子」が似ている、と考えちゃった先生達が出した論文がこちら。
で、本当にその論文の中にこう書いてあります。
Some of our group have hypothesized the existence of an antigenic mimicry
between bacterial flagella of H. pylori and the only flagellated human
cells, the spermatoza.
(我々のグループでは、ピロリ菌の鞭毛と、ヒトので唯一鞭毛を有する細胞である精子に抗原類似性があるのではないかと考えた。)
で、この論文の要点を箇条書きにすると、
とのことです。
すなわち、この論文の結論では、CagA産生性ピロリ菌保有者の精子所見が悪かった、となるそうです。
で、その理由として、この先生たちは
を挙げております。
そんなわけで、日本でのピロリ菌はほぼCagA(+)とのことですから・・・
一方女性ではどうなのでしょう?
こんな論文があります。
同様に論点を箇条書きにしてみます。
と記されています。
ちょっと話が見えにくいかもしれませんね。解説を加えておきます。
この論文で用いられている頸管粘液検査は、別名「Miller-Kurzrokテスト」と呼ばれています。
理論がややこしいのですが、よくできた検査です。
ちなみにこれ、ちゃんとWHOのガイドラインに載っている検査法です。
で、この論文の結果に戻ると、抗ピロリ菌抗体陽性群の頸管粘液はまるで抗精子抗体陽性のように振る舞った、ということですね。
今では常識となったピロリ菌ですが、僕が学生の頃は、「胃炎」は「攻撃因子 v.s. 防御因子のシーソーが傾いた状態」なんて習いました。
それもそんなに昔の話じゃないですよ。
それに(僕は全然専門ではないので良く知りませんが、)今では、ITPという血液の病気(血小板が減ってしまう)の治療にも「ヘリコバクター・ピロリの除菌」が行われるそうです。
つまり、ピロリ菌の影響は、「胃・十二指腸」にとどまらないということです。
一方「ピロリ菌と不妊」は、まだまだ全然マイナーな考え方でしょうが、なかなか面白い発想です。
「ピロリ菌と精子が似てる」
という発想から来たこの理論、数年後には常識になっているのかもしれませんね(?)。
そんなわけで、真実かどうかは将来の判定にゆだねられているわけですが、こんな話も知っておいて損はないのかも知れないと思い紹介させていただきました。