Lesson02:「シロ」「クロ」「グレー」の見分け方


キーワードは「distortion」

先に答えから言ってしまいます。
現在のエビデンスは次のようになっていると思います。
(粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫の意味がわからない場合は、すいません。ググって下さい。)

といった感じです。
これだけ書いて「はいどうぞ」では、本HPの存在意義がなくなっちゃいますので、解説します。

「筋腫」と「不妊」の論文を読んでいると、よく出てくる単語が「distortion」とか「distort」というやつです。
辞書をひくと、distortが動詞で「曲げる、歪める」、distortionは名詞ですから「歪み」ということですね。
何を「歪める」かというと、それが「子宮内膜」であることは、想像に難しくないでしょう。

つまり、子宮筋腫が子宮内膜を「歪めているか」が重要な所見になるわけです。
粘膜下筋腫は普通子宮内膜を「歪めている」でしょうから、これは「クロ」になることが多いわけです。
ひとまとめに筋層内筋腫と言っても、子宮内膜を「歪めている」か「歪めていない」かによって話が変わってきます。
筋層内筋腫でも、強く子宮内膜を歪めていれば、これはもう「クロ」として扱っていいわけです。
一方、子宮内膜を「軽く」歪めているなら「クロに近いグレー」として扱えばよろしいのではないでしょうか?

distortion(-)の筋層内筋腫の最近の考え方

では、子宮内膜を「歪めていない」筋層内筋腫は「シロ」なのか?というと、どうやら「シロ」ではないらしい、というのが最近の考えです。
論文行きます。Human Reproductionです。

この先生たちは、それこそ、
「子宮内膜を変形させていない筋層内筋腫が悪さをしているのか?」
というのを調べるために、今までの世界中の報告を端から調べてみたそうです。
頭が下がる労力ですね。

という結論です。
どうやら、子宮内膜を歪めていない筋層内筋腫でも、妊孕性は低下しているようです
ということで、内膜を歪めていなければ「シロ」かというと、どうやらそうではないらしいのですね。
「グレー」扱い

「ギャー!じゃあやっぱり真っ黒じゃないか!何がグレーじゃ、嘘つき!」
「やっぱり即手術、手術!」

落ち着いてください。
この論文の結論に、こんなことが書いてあります。
428ページの真ん中あたりです。

ということで、この論文を書いた先生達も、即手術を勧めているわけではないのです。
ということで、やはり「グレー」なのです。

一方、漿膜下筋腫は「シロ」と考えてOKのようです。

僕が普段、患者さんを診させていただいているとき、そんなわけで、その患者さんの筋腫を「色」でイメージするようにしています。
後述しますが、その「色」はもちろん、年齢やご希望、既往妊娠の有無など様々な要素で少しずつ変化します。
みなさんも、ご自身の筋腫を色でイメージしてみてください。
シロに近いグレーですか?
クロに近いグレーですか?
純白ですか?

筋腫性不妊を評価する検査は何がいい?

答えは、「MRI+子宮鏡+ヒステロソノグラフィー」の3本立てだと思います。
超音波のみでは流石に正確な評価はできないでしょう。
古い教科書には「子宮卵管造影」なんて書いてあるけど、僕が筋腫の評価目的に子宮卵管造影を見たのは、研修医の時1回だけです。
まあ、悪くはないんでしょうけど、流石に近代兵器に頼った方がいいのでしょう。

【POINT】

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