排卵惹起は必要か?(2)


薬剤惹起のトリガーと自然のLHサージは同じか?

復習しておきましょう。
卵胞がある程度の大きさに育ったところでhCGを注射する(あるいはGnRHアナログを点鼻する)と、LHサージがかかったのと同様な効果が得られ、排卵をしてくるのでした。

で、前出の

「卵胞はいい大きさです。注射打って排卵させましょう。今から36時間後に排卵するので、タイミング持ってくださいね/人工授精しましょう。」

の話に戻ります。
この流れがどうなのか?検証してみましょう。

そもそも自然のLHサージで排卵する場合を考えてみると、

卵胞が育つ
➡内膜が着床に向けてスタンバイする/頚管粘液が精子の侵入を許すべく分泌される
➡「卵胞」も「内膜」も「頚管粘液」もちゃんとスタンバイできた
➡総指揮者である「脳」がLHサージを起こす
➡排卵する、精子も入りやすい、内膜もベスト

となっているわけです。

ではhCGなりGnRHアゴニストなりで薬剤性に排卵させるとどうなります?
たまたま注射打った時/たまたまGnRHアナログ点鼻した時に
「『卵胞』も『内膜』も『頚管粘液』もちゃんとスタンバイできた!」
という保証がありますか?

そうですね。内膜も頚管粘液も準備不足の可能性がありますね。
つまり、LHサージに比べると、精子侵入障害+着床率の低下が引き起こされる可能性があることは想像に難しくないでしょう。
だーれも、卵胞すらも排卵の準備を完了した、という保証が無いのに強制排卵させられるわけですから。

「でも、排卵の時間が正確にわかるなら、いいのでは?」
もっともです。では、そもそも、排卵の時間が正確にわかればタイミング療法の妊娠率は本当にあがるのでしょうか?

古い論文を一つご紹介しておきます。

この論文の論旨は
「基礎体温や尿中LH検出キットで排卵日を推定して性交渉を持つことが妊娠率を上昇させるというエビデンスはない」
「週に2回の性交渉を持ってもらうほうがよい」
といった内容になっています。

そうなんです。
「何月何日何時に排卵しますよ。じゃあ、そこで性交渉を持ってくださいね」
という方法が妊娠率を上昇させるというエビデンスは今のところない
と思います。
自然のLHサージを検出して、そこでタイミング持ってもダメなんです。
ましてhCGじゃなおダメだと僕は思います。
結局「排卵日周囲の定期的な性交渉」これです。で、おそらくこれにより精子が常にフレッシュに保たれることが重要なんだと僕は思います。

「natural-hCG-AIH」 v.s. 「natiral-LHサージ-AIH」

で、表題の通り、AIH前のtriggerがhCG v.s. LHサージどちらがいいのか?を検討した報告があります。

です。以下、論旨まとめ。

ということです。
先ほど記載しました通り

なわけです。
なので、hCGなりGnRHアナログで薬剤性に強制排卵させるのは如何か?と思うわけです。
周りの「受け入れ」の準備が整ってないところで強制排卵させてる可能性があると思うのです。。
せっかく体が絶妙に調和してやっているのに、わざわざその調和を乱す必要があるわけがない。
「体のハーモニー」ぶち壊しの典型例でしょう!

でも、確かにAIHはどうしても病院の休みもありますし、LHサージが捕まえきれない周期もあります。
あまり粘っていて、LHサージ捕まえられず排卵しちゃった、なんて目も当てられません。
この辺の兼ね合いということになります。

でも、僕は、タイミングの時は、そういうわけでhCG極力使わないようにしています。
ご主人さんが出張でいないとか、単身赴任だとか、ちゃんと正当な理由があるときはしょうがないですけどね。

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